折々の記（65）
去る6月11日、渋谷文化村のオーチャードホールで開催された千住真理子ヴァイオリンリサイタルを聴いた。演奏の前にあったソリストのプレトークによると、千住真理子はもう還暦を迎えたとのことである。彼女は2歳3か月でヴァイオリンを手に取り、ひたすらヴァイオリン人生を走り続けてきた。20歳頃には一度ヴァイオリンを止めたこともあったらしい。しかし、末期の患者から「もう一度あなたの演奏を聴きたい」との頼みがあったことが契機となり、演奏を再開したという。その後名器ストラデイバリウスに出会い、演奏に磨きがかかってきた。当日の演奏曲目は、兄千住 明作曲のララバイなど3曲、ヴィヴァルデイの四季より春と夏、ショーソンの詩曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲であった（東京フィルハーモニー交響楽団、指揮岩村 力）。筆者は、千住真理子の美しいヴァイオリンの音色が好きで、時間が取れれば彼女の演奏会を聴いてきた。本日も、特に最後のメンデルスゾーンは素晴らしかった。アンコールの際には、兄の千住 明も登場した。