人生折々の記（35）
植物病原菌の研究者で画家でもある奥 八郎さんが今年１月４日に９３歳で亡くなった。生前の奥さんを知る一人としてご冥福をお祈りする。昭和４０年代、奥さんは筆者と同じ 三共の研究所に所属しておられた。奥さんはイネごまはがれ病菌やいもち病菌などの機能について研究していて、合成が専門の筆者とは研究分野が異なっていたが、会議などの場では 同席することもあった。奥さんは、当時から画家としても知られており、会社のリクリエーションの折りなどにはよく絵を描いておられた。奥さんはほどなく研究所を去り、京都大、 岡山大に転身された。最後は、岡山大の名誉教授および日本農薬学会終身会員であった。画家としての奥さんは光陽会に所属し、最近まで上野の森美術館での展覧会に度々出展されて いた。筆者も趣味で絵を描いているので、奥さんの作品展には度々出かけていた。奥さんの晩年のモチーフとしては「廃屋」が多く描かれていて、緑豊かな背景の中に廃屋が巧みに 配置されていた。青や緑系の彩色は筆者にも参考になった。奥さんの新しい作品をもう見ることができないのは誠に残念である。