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サバクトビバッタの集合フェロモン

近年、アフリカや中東地域で穀類に対するサバクトビバッタ(desert locust:Schistocerca gregaria)の被害が激増している。バッタ被害増大の一因として、気候変動に起因する 多雨が挙げられている。バッタの大群は数十億匹の個体から成り、数百平方キロメートルにわたってトウモロコシなどの農作物に襲いかかり、食い尽くしてしまう。
今のところ、バッタ群の防除法としては殺虫剤の空中散布が行われているが、バッタ群は神出鬼没であり発生予察が困難である。その上、殺虫剤は有用生物にも悪影響を及ぼす。最近、中国科学アカデミーのGuoらはバッタ群集の誘因として集合フェロモンの分泌を挙げている。研究グループは、バッタの分泌物を調べ4-ビニルアニソールが集合ホルモンとして働いていることを確かめた。別に化学合成された4-ビニルアニソールにはバッタを集合させる作用が確認された。また、空気中の4-ビニルアニソール濃度はバッタの密度増加に伴って高まった。彼らは4-ビニルアニソールの受容体を同定し、この受容体をコードする遺伝子Or35を同定した。Or35欠損バッタには、集合性が失われていることが見出された。
このようなフェロモンを用いた野外実験も行われた。中国の天津地区で行われた野外実験では、4-ビニルアニソールを塗布したトラップに多数のサバクトビバッタが吸引された。しかし、アフリカなどで多発しているバッタの大群を実際にこの集合ホルモンを用いて防除できるかどうかは未だわかっていない。一つの可能性としては、集合フェロモンのアンチドートを開発できれば、バッタの群集化を阻止して離散させることが可能になるかも知れない。

主な出典:Nature,Vol 584, 27 August 2020, p 528.

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