トピックス（305）

コロナウイルスと巨大ウイルス


ウイルスは地上最小の生物とされ、その大きさは通常200ナノメートル前後（1ナノメートルは100万分の1メートル）とされる。現在世界中に感染が広がっている新型コロナウイルス(2019-nCoV or SARS-CoV-2)の大きさも50～200ナノメートル前後である。これは二本鎖RNAを持つコロナウイルスに属している。このウイルス属には、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、ヒトインフルエンザウイルスなども含まれる。SARS-CoV-2は、スパイクタンパク、ヌクレオシドタンパク、膜タンパク、エンンベロープタンパクの4種タンパクとRNAより構成されている。タンパクには、感染力と病原性を高めるフーリン切断部が含まれている。エンベロープの最外側に位置するS-タンパクは、細胞表面のACE2（アンジオテンシン-2)受容体に結合して細胞への感染を可能にしている。コロナウイルスのゲノムは29,903塩基で構成される。その強力な感染力はヒトの臓器や血管などに存在するACE2受容体に対する結合性に関係していると考えられる。

最近、英国の研究グループによりアメーバを寄主とする巨大ウイルスが発見された。この巨大ウイルスの大きさは400～800ナノメートルとされ、核細胞質を持つ大型DNAウイルスである。このウイルスは21個の遺伝子を持つDNAウイルスであり、ミミウイルス（偽ウイルス）とも呼ばれている。このウイルスは1181404個の塩基で構成される二重鎖DNAを有している。このミミウイルスは肺炎に罹患したチュニジア人女性の肺から分離されたことから肺炎の起炎菌とも考えられている。

このような巨大ウイルスは構造上からもはや細菌と変わらない。ミミウイルスの誕生は、人類の将来に警鐘を鳴らしているとも考えられる。このようなウイルスが恐ろしい感染症を引き起こすことも考えられるからである。

主な出典：S. Duponchel and M.G.Fisher,"Viva lavidaviruses! Five features of virophages that parasitize giant DNA viruses" Plos Pathogens,https://doi.org/10.1371/jounal.ppat.1007592 March 21,2019
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