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２０１０年度は、遺伝子組換え作物（ＧＭ作物）が１９９６年に初めて米国で商業的に栽培されてから１５年目に当る。これを契機として、 ＩＳＡＡＡ（ＧＭ作物の普及を勧める国際機関）では世界のＧＭ作物商業栽培の現状について報告している。我国では、遺伝子組換え食品に対する拒否反応は依然として 根強い。しかし、ＩＳＡＡＡの報告からはＧＭ作物の栽培がかなりのペースで普及しつつあることが分かる。

２０１０年、世界のＧＭ作物の栽培面積は１億ヘクタールを超えた。しかも、栽培面積が５０００万ヘクタールを超えるのに１０年間かかったが、 その後の５年で約１億ヘクタールに達した。２０１０年に限ると、２００９年に比べて１４００万ヘクタールの増加を示した。これは１年間の増加としては過去２番目に多い。この間、 ＧＭ作物は現代農業における作物栽培上、多くの国と栽培農家の間で完全に定着した。ＧＭ作物の栽培農家に対するアンケート調査によると、ほとんどの農家が今後もＧＭ 作物の栽培を続けると回答している。

ＧＭ作物を商業的に栽培している国は、２０１０年度には２９ヵ国に達した。ＧＭ作物が初めて商業栽培された１９９６年では僅か６ヵ国であった。 ２０１０年にＧＭ栽培面積が１００万ヘクタールを超えた国は１０ヵ国に、又１０万ヘクタールを超えた国は１７ヵ国に達した（表を参照）。最大のＧＭ栽培国は米国で、トータル６６．８ 百万ヘクタールで、作物の種類はトーモロコシ、大豆、綿、ナタネ、甜菜、アルファルファ、パパイヤ、カボチャなどである。表では、栽培面積が１０万ヘクタール以下の国は省略されて いるが、この中にはスエーデン、ドイツ、ポーランドなど、欧州、北欧、東欧などの国々が含まれている。

２０１０年度には、新たに４つの国がＧＭ作物栽培を開始した。パキスタン、ミヤンマー、スエーデン及びドイツである。このうち、パキスタンと ミヤンマーはＢｔ綿、スエーデンは高品質でんぷんを産生するジャガイモを栽培した。ドイツでは、中断していたＧＭ作物の栽培を再開した。
２０１５年度までに、ＧＭ作物の栽培国は ４０ヵ国に達すると考えられている。近年では、先進国よりも開発途上国の農家の間で、ＧＭ作物の栽培が増加する傾向が見られる。これは、ＧＭ作物の栽培が経済的に有利な ためと考えられる。２０１０年度では、全世界のＧＭ作物栽培面積の４８パーセントは開発途上国によって占められていたが、２０１５年度までにその割合は５０パーセントを超えると 考えられている。代表的な途上国は、中国、ブラジル、アルゼンチン及び南アである。

近年、干ばつの被害が増大しているオーストラリアでは、ＧＭ綿とＧＭナタネの栽培が急増している。２００９年度に２５万ヘクタールであったＧＭ 綿とＧＭナタネの栽培面積が２０１０年には６５万ヘクタールに伸長した。西アフリカのブルキナ共和国では、Ｂｔ綿の栽培面積が２００９年度の１１万５０００ヘクタールから２０１０年 には２６万ヘクタールに伸長した。従来、ＧＭ作物の商業栽培に消極的だったＥＵでは、２０１０年度に６ヵ国がＧＭトーモロコシを栽培し、チェコ、スエーデン、ドイツの３ヵ国はＧＭ ジャガイモ（Ａｍｆｌｏｒａジャガイモ）の栽培を開始した。このジャガイモは、高品質でんぷんを産生する。１８４５年のアイルランド大飢饉の原因となったＬａｔｅ　ｂｌｉｇｈｔに抵抗性を 示すジャガイモはＥＵで開発研究が続けられており、２０１５年までの商品化が見込まれている。

注目すべきは、全世界の農耕地１５億ヘクタールのうちの５２パーセントに相当する７７５百万ヘクタールの農地がＧＭ作物を栽培している
２９ヵ国 が所有していることである。ＧＭダイズは２０１０年には７３．３百万ヘクタールに栽培され、全世界のＧＭ作物の５０パーセントを占めた。ＧＭトーモロコシは４６．８百万ヘクタール（３１ パーセント）、ＧＭ綿は２１．０百万ヘクタール（１４パーセント）、ＧＭナタネは７百万ヘクタール（５パーセント）に栽培された。

２つ又は３つの形質を組み込んだＧＭ作物（スタック形質作物）の栽培面積が急速に増加している。２０１０年には３２．３百万ヘクタールに スタック作物が栽培された。これは、２００９年度における２８．７百万ヘクタールから１３パーセントの増加に相当する。米国やフィリピンでは、２つの害虫抵抗性遺伝子と１つの除草剤 耐性遺伝子を組み込んだスタックトーモロコシが急速に普及しつつある。２０１０年には８種類の害虫に抵抗性の遺伝子と１種の除草剤に耐性を示す遺伝子を組み込んだトーモロ コシが米国とカナダに登場した。今後は、害虫抵抗性、除草剤耐性及び出力形質（オメガー３オイル生産性、プロビタミンーＡ生産性など）を組み込んだＧＭ大豆やコメが登場して くると予想される
（２０１１年１１月１０日）。