トピックス（063）

１９８４年、欧州では殺虫剤抵抗性対策委員会（Insecticide Resistance Action Committee、IRAC） が発足した。現在では、ＢＡＳＦ、バイエルクロップサイエンス、ダウアグロサイエンス、デユポン、ＦＭＣ、シンジェン タ等有力企業が会員となって、主として次のような活動を行っている。

IRAC自体は、Web上での情報提供が主な仕事で実務は、会員企業と各国の抵抗性対策委員会が行ってい るようである。IRACが連携している各国の委員会は、米国、ブラジル、インド、東南アジア、オーストラリア、スペイン、 南アであり、日本では対策委員会自体が組織されていない。

IRACでは、既存の殺虫剤・殺ダニ剤を作用機構別に分類して、同じ作用性の剤を繰り返して使用しな いようにユーザー/アドバイサー教育を行っている。この分類では、殺虫剤・殺ダニ剤を第１作用点に関し、２６のメイン グループに分け、更にそれぞれを１〜３のサブグループに分けている。分類法は中々示唆に富んでいるのでその１部を文末 に引用した。この表から分かることは、殺虫剤の第１作用点は非常に多岐にわたっていることである。神経系に作用する グループだけでも６種類ある。又、例えば第５、１６、２５グループのように、該当する剤が未だ１種類しかないグルー プもある。同一グループに属する剤が多い場合には、交差抵抗性が出る可能性が大きいので乱用の結果、共倒れになる恐れ もある。

そこで、IRACでは、同一サブグループに属する剤を多用しないで異なるサブグループの剤を交互に使 うように指導している。又、基本的には、生物農薬の使用や害虫抵抗性の作物を栽培したりして合成殺虫剤・殺ダニ剤の使 用回数をなるべく減らすことも提唱している。

尚、このリストでは、抵抗性獲得が作用点の変異によるものであり、それが次世代以降に継承される ことを前提としている。害虫が殺虫剤を代謝する能力を獲得した場合などは考慮されていない。

今後、新規の殺虫剤・殺ダニ剤の開発に際しては、既存の剤とは異なる作用点を持つものを開発する ことが望ましい。最近、新しく市場に登場したピメトロジン、ビフェナゼート、エトキサゾールなどは一応リストアップさ れてはいるが、第１作用点は不明となっている。最近上市されたバイエルの新規殺ダニ剤スピロジクロフェンは、脂質の生 合成を阻害するので新しいグループが又一つ増えたことになる。

（2004年3月20日）