ミニ解説（179)

21世紀の新農薬（85）ピカルブトラゾクス

ピカルブトラゾクス（商品名：クインテクト他）は日本曽達が開発したピリジルカルバメート系の殺菌剤である。本殺菌剤は、野菜、果物、西洋芝などの疫病、べと病、苗立枯れ病などの病害に有効で、初年度国内登録は平成29年1月で令和2年8月現在単剤4種、イミノクタジンとの混合剤1種が国内登録されている。この殺菌剤はユニークなテトラゾール環を有しており、同社の研究陣はテトラゾール環の生理活性に着目して探索を進めた結果本剤に到達した。本殺菌剤の作用機構は明らかになっていないようであるが、電子伝達系複合体の阻害ではないとされている。
ピカルブトラゾクスの土壌中半減期は、9.4日（水田土壌）、1.9〜3.4日（畑土壌）である。ラットに対する2年間の慢性毒性試験データに基づくADIは、0.023mg/kgBW/day、無毒性量は2.34mg/kgBW/dayで、急性参照用量ARfDは設定の必要なしと判定されている。ピカルブトラゾクスのミツバチ、水生昆虫、鳥類などに対する毒性はきわめて低い。
追記：ピカルブトラゾクスの開発は、大日本インキのグループによる研究に端を発しているとの私信を関係者から頂きました。大日本インキの農薬事業が日本曽達に譲渡された際に本剤関連の開発も日本曽達に引き継がれました。