ミニ解説（147)

21世紀の新農薬（53） イソチアニル

イソチアニル（商品名：ルーチンなど）はバイエル社により発見されたイネ病害防除剤で、いもち病、シラハガレ病、もみ枯れ細菌病などに効力を 示す。この殺菌剤は、病原菌に対して直接抗菌活性を示さないが、植物の感染特異的タンパク質(PR-タンパク）を活性化させて病害抵抗性を誘導する。イソチアニルは、イネに 対して予防的に処理することで、高い防除効果を示す。散布よりも、水面施用、苗育苗箱施用、種子処理などの方法で、低薬量で高い防除効果を示す。本剤は、耐性菌発生 のリスクが低いとされる。

イソチアニルのラットに対する急性経口ＬＤ50>2000mg/kg、急性経皮ＬＤ50>2000mg/kg　と報告されている。本剤の土壌中代謝は、 好気的堪水土壌での半減期は、61.9〜73.7日（土壌中）、0.3〜3.3日（田面水）である。イソチアニルは、コイ、ミジンコ、ミツバチなどの有用生物に対する毒性は低い。

イソチアニルの我国での初年度登録は平成22年5月であり、平成27年12月現在で単剤6剤、混合剤30剤が登録されている。混合剤の 主な混合相手は、クロチアニジン、イミダクロプリド、クロラントラニリプロール、スピネトラムなどのイネ害虫用殺虫剤である。