ミニ解説（142)

21世紀の新農薬（50） スピロテトラマト

スピロテトラマト（商品名モベントフロアブル）はバイエルクロップ　サイエンス社によって開発されたケトエノール系の殺虫剤で、北米、欧州、オーストラリアで先行して開発された。 日本では2007年に公的委託試験が開始され、2012年に22.4％フロアブルとして農薬登録された。この殺虫剤は、キュウリ、トマト、ナス、メロン、バレイショ、チューリップ などの吸汁害虫（ダニ、アブラムシ、アザミウマ、コナジラミなど）に効果を示す。

スピロテトラマトは、昆虫のアセチルＣｏＡカルボキシラーゼを阻害することによってその脂質生合成をブロックする。その特異な作用機序のために、 既存の殺虫剤、殺ダニ剤とは交差抵抗性を示さない。

スピロテトラマトのラットに対する急性経口ＬＤ50>2000mg/kg、同じくラットに対する急性経皮毒性はLD50>4000mg/kgと 報告されている。本剤のウサギの眼や皮膚に対する刺激性は認められていない。土壌中半減期は、米国の砂壌土で1.2日、ドイツの壌土で2.9日と極めて短い。