ミニ解説（133)

21世紀の新農薬（41）− スピネトラムー

スピネトラム（商品名：デイアナ）はダウ・アグロサイエンスが開発した天然物由来の半合成殺虫剤であり、燐し目、双し目、アザミウマ目、甲虫目、 シロアリ目、ある種の半し目昆虫に有効である。ダウ・アグロサイエンスは住友化学と日本での農薬登録に向けた開発を共同で行い、平成２３年３月に国内登録を取得した。日本 以外での開発はダウ・アグロサイエンスが行っており、２００８年１月現在米国とニュージーランドで登録されている。

国内では、現在までに単剤が３剤、混合剤１剤が登録されている。単剤は、水和剤（有効成分２５％又は１１．７％を含む）及び粒剤 （有効成分０．５％）であり、水和剤は果樹、野菜、茶のシンクイムシ、ハマキムシなどの広い範囲の害虫が、粒剤はイネのコブノメイガが対象となっている。混合剤はイネいもち病 及びウンカ、ニカメイチュウなどの水稲害虫が対象の箱粒剤で、クロチアニジン、イソチアニルが混合相手となっている。

ダウ・アグロサイエンスは、天然の殺虫成分であるスピノシン（spinosyn、商品名spinosad）を構造変換して多数の誘導体を合成して 構造と活性を最適化した結果、スピネトラム(spinetoram)を選抜した。スピネトラムの基本的な殺虫活性はスピノシンを上回るとされる。それは、ラムノース部分のＯ−エチル 化と４環性部分の二重結合の飽和（還元）によるものと考えられている。

スピネトラムの作用機序はニコチン性アセチルコリン受容体の活性化であるが、ニコチンやネオニコチノイドとは異なるサイトに作用すると考えられて いる。昆虫に対する作用性は、接触毒及び摂食毒による。

スピネトラムのラットに対する急性経口ＬＤ50及び急性経皮ＬＤ５０値は、＞５０００ｍｇ/ｋｇであり、温血動物を始め、有用生物には毒性が 極めて低い。土壌中の半減期は短く、３〜５日であり、水中での半減期は１日以内と報告されている。