ミニ解説（059）

農薬科学の進歩 （殺菌剤）−プロベナゾールの開発(1)−

プロベナゾール（商品名：オリゼメート）は、明治製菓が開発した殺菌剤で1975年に 国内で上市された。今年は、発売後30周年目を迎えることになる。発売後、これほどの年数が経過している にも拘らず、平成14年度の出荷高は混合剤も含めて100億円を優に超えている。これは、効力や安全性に優 れているのはもちろんであるが、国内の最重要市場の一つであるイネのいもち病を対象にしているからであ る。

イネのいもち病は、イネの生育ステージにより苗いもち、葉いもち、穂いもちに分け られる。出穂期以後に感染すると、イネは「ずり込み状」となり、収穫が皆無となることもある。プロベナ ゾールは、イネの苗に処理した場合（育苗箱処理）、葉いもちまで抑えることができる。葉いもちは、穂 いもちの供給源となるので、葉いもちを的確に抑えることができれば、穂いもちをかなりの程度まで防除 することができる。

プロベナゾールの化学名（IUPAC方式）は、3−アリロキシ-1,2-ベンツ[d]イソチアゾー ル-1,1-ジオキシドで、分子内にＳとＮを含む５員のヘテロ環とベンゼン環が融合した基本構造を有している。 工業的な合成法は確立されており、平成14年度の原体生産量は1194トンで、イネ用の殺菌剤としては最も多い。 （この項続く）