ミニ解説（009）

植物成長調節剤（英語ではPlant Growth Regulator、略してPGR）は、植物成長調整 剤と呼ばれることもある。この種の農薬は、例えばオーキシン、ジベレリン、エチレンあるいはブラシノ ライドなどの植物ホルモンのはたらきをコントロールすることによって、農作物の成長促進、増収、発根 促進、果実の落下防止、熟成、わい化（背丈を低くして形を整える）をもたらす。又、植物ホルモンとは 関係ないが、タバコの腋芽防止剤もPGRに含まれる。現在、日本で農薬登録されているPGRとしては、イネ の倒伏軽減剤、ブドウの種無し化剤、花、果樹などのわい化剤、それに前述のタバコの腋芽防止剤などが ある。また、最近田んぼのあぜ道などに生える雑草の成長を抑える薬剤も実用化された。

植物成長調節剤を開発するために、定型的なスクリーニングが実施されることは通常 ない。むしろ、殺菌剤、殺虫剤、除草剤を見出すための一般的なスクリーニング過程で、偶然発見される ことが多い。植物成長調節剤に関しては、大学や国公立研究機関を中心にして活発に研究されており、日 本のレベルは世界でもトップクラスである。しかし、研究成果を農業現場での実用化に結び付けるのが困 難であり、市場に出荷される全農薬中に占める植物成長調節剤の割合は、現状では数パーセント程度であ る。