ミニ解説（004）

サンプル供給源として最も重要なソースは、自社の合成化合物である。合成研究者の 頭には、文献や特許情報などから農薬として有効な化合物の情報がインプットされている。それらの情報を ベースにして、合成したい化合物をペーパー上で、あるいはコンピューターの画面上でデザインしてから合 成する。合成に際しては、最新の有機化学的知識と技術が要求される。しかし、コンピューター技術者が 「これは効く可能性が大きいよ」と提案した化合物でも、どうしても合成できないケースも多い。

近年、農薬市場が伸び悩んでおり、独創的な農薬でないと商品化は困難である。公開された情報だけを参考 にしても、しょせん他社のモノマネの域を出ない。そこで、自社独自の評価系（スクリーニングシステム） から浮かび上がってきた有効化合物の構造は、重要な情報源である。その時点で、自社だけが知っている情 報だからである。独自の情報をベースにして、合成科学者は周辺化合物を合成する。それが最終的に商品化 に結びつく可能性は大きい。